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妊娠が判明して嬉しい反面、多くの妊婦さんを悩ませるのが「つわり」です。吐き気や嘔吐、食欲不振など、つらい症状に「いつまで続くの?」と不安を感じている方も多いのではないでしょうか。
つわりは妊婦さんの約70~80%が経験するといわれています。症状の現れ方や強さには個人差がありますが、一般的な経過を知っておくことで、心の準備ができます。
この記事では、産婦人科専門医の視点から、つわりのピーク時期や妊娠週数別の症状変化、そして日常生活で実践できる6つの対策を詳しく解説します。
つわりとは?妊娠初期に起こる生理的な変化
つわり(悪阻)とは、妊娠初期に現れる吐き気、嘔吐、食欲不振、においへの過敏さといった消化器症状を中心とする不快な症状の総称です。これは病気ではなく、妊娠に伴う生理的な変化の一つと考えられています。
つわりの症状は多彩で個人差が大きいのが特徴です。「なんとなくムカムカする」程度で済む方もいれば、日常生活に支障が出るほど重い症状に悩まされる方もいます。

つわりの代表的な症状
つわりの症状として、以下のようなものが挙げられます。
- 吐き気、嘔吐、唾液の増加
- 全身倦怠感、頭痛、眠気
- においに敏感になる(米飯の香りやタバコの残り臭など)
- 食べ物の好き嫌いが変化し、食欲が減退または増進する
これらの症状は、早朝空腹時に強く出る傾向にあります。このことから英語でMorning sicknessともいわれています。
つわりの種類は5つに分類される
つわりはその症状により大きく5種類に分かれます。
- 吐きづわり:食べると吐いてしまう
- 食べづわり:食べないと気持ち悪くなってしまう
- においつわり:特定のにおいを嗅ぐと気持ち悪くなってしまう
- 眠気つわり:眠気やだるさが酷くなる
- よだれつわり:よだれが延々と出てきて口の中がネバネバする
複数の種類が同時に現れることもあります。ご自身のつわりがどのタイプなのかを知ることで、適切な対処法を見つけやすくなります。
つわりのピークはいつ?妊娠週数別の症状変化
つわりには個人差がありますが、一般的な経過の目安を知っておくと安心です。
つわりはいつから始まる?
つわりは妊娠5~6週目あたりに始まることが多いです。これは生理予定日を1週間~2週間過ぎ、妊娠検査薬で陽性反応が出て「妊娠かな?」と気づく時期とほぼ同じタイミングです。
早い方の場合、妊娠4週(次の生理予定日頃)から「なんとなく体調が優れない」「いつもと違う眠気を感じる」「食欲がない」といった、風邪の初期症状や生理前の不調に似た変化を感じ始めることもあります。

つわりのピークは妊娠8~10週頃
つわりの症状のピークは、妊娠8週~10週あたりのことが多く、この時期には吐き気やむかつきなどのつらい症状を経験される方は少なくありません。妊娠8週~9週あたりにもっとも強い症状が現れ、10週以降から徐々に治まっていくとされています。
ただし、これもあくまで一般的な話であり、人によっては11週以降もひどいつわりに悩まされる方も少なくありません。
つわりはいつ終わる?
つわりのピークを越えて、12週目あたりからは徐々に症状が軽くなっていくことが多く、16週目までに大半の方は症状が気にならなくなるようです。多くの場合、妊娠中期(安定期)に入ると自然に症状が和らいでいきます。
つわりが治まり、食事ができるようになったら、ママと赤ちゃんのためにも栄養バランスを考えた食事を摂るようにしましょう。
後期つわりとは?
つわりは妊娠初期(~15週)に出ることがほとんどですが、妊娠後期(妊娠8ヶ月以降)に起こることもあります。これが「後期つわり」です。吐き気、胸やけ、胃もたれなどを頻繁に感じるような場合、後期つわりの可能性があります。後期つわりは大きくなった子宮におされ、胃腸の働きが不良になることなどが関与しています。
つわりの原因は何?最新研究で見えてきたメカニズム
つわりの明確な原因は、現代の医学でも完全には解明されていません。しかし、いくつかの要因が複雑に絡み合って引き起こされると考えられています。
ホルモンバランスの急激な変化
最も有力な説の一つが、妊娠によって体内のホルモンバランスが急激に変化することです。特に、胎盤の元となる絨毛から分泌される「hCG(ヒト絨毛性ゴナドトロピン)」というホルモンが、脳の嘔吐中枢を刺激するために吐き気などが起こるのではないかといわれています。
このhCGホルモンの分泌量は、つわりのピーク時期とされる妊娠8週~10週頃に最大になるため、時期的な関連性が指摘されています。

GDF15というホルモン様タンパク質の関与
最近の研究により、GDF15と呼ばれるホルモン様タンパク質が妊娠中のつわりの主要な原因の一つである可能性が高いことがわかってきました。GDF15は胎盤から分泌され、脳の嘔吐中枢に作用して吐き気や食欲不振を引き起こすことが判明しています。
英ケンブリッジ大学主導の研究によれば、つわりの重症度には、胎児が作り出すGDF15の量と、母親がGDF15の吐き気作用に対してどれだけ敏感かが直接関係しています。母体における胎児由来のGDF15値は、妊娠期間とともに増加し、GDF15に対する母親の感受性の高さは、妊娠前の母体のGDF15値に左右されるとされています。
プロゲステロンの影響
同じく増加する女性ホルモンの「プロゲステロン(黄体ホルモン)」が、胃腸の筋肉を緩ませて動きを鈍くし、食べ物が胃に留まる時間が長くなることで、ムカムカ感や吐き気を引き起こすとも考えられています。
その他、ビタミン不足や、環境の変化、精神的なストレスなども、つわりの症状を悪化させる一因となる可能性が指摘されています。
つわりのピークを乗り切る6つの対策
つわりのピーク時期は本当につらいものです。しかし、日常生活で工夫できる対策があります。ここでは、実践しやすい6つの対策をご紹介します。
【対策1】食べられるものを、食べられる時に
つわりで食欲がない時は、食べられるものを食べられるだけ食べましょう。1回の食事量を少なくして回数を増やすと良いでしょう。胎児には母体から優先的に栄養が供給されますので、発育への影響を心配することはありません。
栄養価やバランスを考えすぎず、「今、食べられるもの」を優先してください。酸っぱいものが欲しくなる方も実際、少なくありません。

【対策2】水分補給を工夫する
脱水症状を防ぐため、水分補給は非常に重要です。一度に大量に飲むのではなく、少量ずつこまめに飲むようにしましょう。冷たい飲み物や炭酸水、レモン水など、飲みやすいものを見つけてください。
吐き気が強い時は、氷を舐めるだけでも水分補給になります。
【対策3】においへの対策を徹底する
においつわりがある方は、特定のにおいを避けることが大切です。炊飯器の蒸気、タバコの臭い、香水などが苦手になる方が多いです。
マスクを着用したり、換気を十分に行ったり、調理は家族に協力してもらうなど、においを避ける工夫をしましょう。
【対策4】十分な休息とリラックス
眠気やだるさが強い時は、無理をせず休息を取りましょう。つわりは身体が妊娠に適応しようとしている証拠です。「いつか終わる」と割り切り、自分を責めないことが大切です。
気分転換やリラックスを心がけ、ストレスを溜めないようにしてください。
【対策5】職場への報告と理解を得る
仕事をしている方は、早めに職場に妊娠を報告し、理解と協力を得ることが重要です。つわりの症状は外見からはわかりにくいため、周囲の理解が得られないこともあります。
必要に応じて休憩時間を増やしたり、勤務時間を調整したりすることも検討しましょう。
【対策6】医療機関での治療も選択肢に
症状が重い場合は、我慢せず医療機関を受診しましょう。ビタミンB6と抗ヒスタミン薬を併用した【ボンジェスタ】という治療薬も海外では流通がありますが、日本では2026/4月現在では未承認です。
点滴で水分や栄養素を補うなどの治療を行うこともできます。

こんな時は受診を!妊娠悪阻のサイン
つわりの症状が強くつらい場合、医学的な治療が必要かもしれません。症状が重く、水分補給も困難になり、体重減少などが著しい場合は「妊娠悪阻(にんしんおそ)」と呼ばれ、医療機関での治療が必要となる場合もあります。
受診すべき症状の目安
以下のような症状がある場合は、がまんせずに受診してください。
- 食事だけでなく、水分も摂れない
- 体重の減少が続いている(妊娠前の5%以上)
- 尿の量が少なくなった
- 1日に何度も吐いてしまう
- 16週目を過ぎても症状が軽快しない
- 意識がもうろうとする
- つわり以外の気になる症状(性器出血、下腹部痛など)がある
- つわりの症状が徐々にではなく、突然消失した
妊娠悪阻は、早産や低出生体重児と関連があり、母体に激しい吐き気、嘔吐、体重減少、電解質異常を引き起こし、入院治療が必要となることもあります。極度の栄養障害ではビタミンB1の欠乏により、記憶力の低下が起こる可能性があります。重篤な場合は記憶力低下が戻らない場合があるので、適切な治療を受ける必要があります。
早期に点滴とビタミンB1補充でほとんどが回復しますので、我慢せず早めに受診することが大切です。
つわりがない・軽い人もいる?個人差について
つわりは妊婦さんの約70~80%が経験するといわれていますが、逆に言えば約20~30%の方はつわりをほとんど経験しないということです。つわりがない、または軽い場合でも、妊娠経過に問題があるわけではありません。
つわりの有無や強さは、体質やホルモンへの感受性、生活環境など、さまざまな要因が関係しています。「つわりがないから赤ちゃんが元気じゃないのでは?」と心配する必要はありません。
定期的な妊婦健診で赤ちゃんの成長を確認していれば、安心して過ごしていただけます。
あゆみレディースクリニック高田馬場の妊婦健診について
当院では、里帰り分娩を予定している妊婦さんや、提携先の分娩施設で出産を予定している妊婦さんに向けて妊婦健診を行っています。妊婦健診は概ね32週まで対応しており、分娩先が決まっていない場合は、提携先病院をはじめとして患者さんに合った病院の紹介も行っています。
高田馬場駅から徒歩1分という通いやすい立地にあり、JR山手線・西武新宿線・東京メトロ東西線からアクセスしやすい点が特徴です。女性医師と助産師が常駐し、初診からWEB予約やLINE予約に対応しています。
妊婦健診では、正常な妊娠経過の確認、妊娠中に起こりやすい合併症の予防、便秘・つわり・貧血などのマイナートラブルへの対応、保健指導、さらにハイリスク妊娠や合併症の早期発見を目的としています。血圧、体重、浮腫の有無、尿検査(蛋白尿・尿糖)、胎児の成長具合(超音波検査)を毎回チェックし、採血や内診などは妊娠週数に応じて必要な時期にご案内します。
当院では、一方的に治療を提案するのではなく、いくつかの選択肢を提示して、患者さまと一緒に治療を進めるようにしています。そのために、治療内容をより分かりやすく説明し、患者さまが疑問や不安を持ったまま治療を始めることがないよう心がけています。
つわりでお悩みの方も、どうぞお気軽にご相談ください。アットホームな雰囲気で一人一人に寄り添った診察を心がけています。
まとめ:つわりは必ず終わりが来ます
つわりのピークは妊娠8~10週頃が一般的で、多くの方は妊娠16週頃までに症状が軽快します。しかし、個人差が大きいため、ご自身のペースで無理をせず過ごすことが大切です。
つわりの原因はホルモンバランスの変化が主と考えられており、最近の研究ではGDF15というホルモン様タンパク質の関与も明らかになってきました。
日常生活では、食べられるものを食べられる時に食べる、水分補給を工夫する、においへの対策を徹底する、十分な休息を取る、職場の理解を得る、必要に応じて医療機関を受診するという6つの対策が有効です。
症状が重い場合は我慢せず、早めに医療機関を受診しましょう。妊娠悪阻は適切な治療で回復しますので、一人で抱え込まないことが大切です。
つわりは必ず終わりが来ます。「いつか終わる」と信じて、ご自身を大切にしながら、この時期を乗り越えていきましょう。
あゆみレディースクリニック高田馬場では、妊婦健診を通じて妊娠中のさまざまなお悩みに寄り添っています。つわりでお困りの方、妊婦健診をご希望の方は、お気軽にWEB予約・LINE予約をご利用ください。
著者情報

院長 佐藤 歩美
経歴
横浜市立大学医学部 卒業
NTT東日本関東病院 勤務
総合母子保健センター 愛育病院 勤務
ベビースマイルレディースクリニック有明 副院長などを経て 現在に至る
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
日本周産期・新生児医学会 周産期(母体・胎児)専門医
女性医学学会 女性ヘルスケア専門医
日本性感染症学会 認定医
日本抗加齢医学会 認定医
日本医師会 認定産業医





