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妊娠悪阻(にんしんおそ)とは何か?つわりとの違いは?
妊娠悪阻とは、妊娠中の悪心・嘔吐が重症化し、脱水・体重減少・ケトーシスを招く疾患です。一般的な「つわり」は妊娠に伴う生理的な変化であり疾病ではありませんが、妊娠悪阻は疾病として扱われ、健康保険が適用されます。
つわりは妊婦の半数以上が経験するとされており、多くは妊娠15週ごろに自然に落ち着きます。一方、妊娠悪阻はそのごく一部が重症化したケースです。
嘔気や嘔吐は早い方で妊娠5週ごろから発生し9週ごろにピークを迎え、15週頃に消失するととされています。妊娠悪阻はこの「正常な悪心・嘔吐の極端な型」と位置づけられています。
- つわり:妊娠に伴う生理的変化。健康保険適用外。
- 妊娠悪阻:脱水・体重減少・ケトーシスを伴う疾患。健康保険適用。
原因としては、エストロゲンやヒト絨毛性ゴナドトロピン(β-hCG)値の急激な上昇が関与していると考えられています。多胎妊娠や胞状奇胎でも発症リスクが高まります。
高田馬場駅すぐの産科・婦人科 あゆみレディースクリニック高田馬場
つらいつわりを我慢していませんか
水分もとれない、体重が減ってきたといった場合は、治療が必要なことがあります。我慢せず、早めにご相談ください。当院には処置・点滴室もございます。

点滴・入院が必要になる基準はどこにあるか?
医療機関が入院を勧める主な基準は、「体重が妊娠前比5%以上減少」「尿中ケトン体陽性」「水分摂取困難・脱水症状」の3点です。これらが複数重なる場合、妊娠悪阻と診断され入院・点滴治療が開始されます。
MSDマニュアル プロフェッショナル版(2024年)では、妊娠悪阻の鑑別指標として以下が挙げられています。
- 体重減少:体重の5%超(例:妊娠前50kgなら47.5kg以下)
- 脱水:唇の乾燥・ふらつき・頻脈・低血圧
- ケトーシス:尿中ケトン体陽性(エネルギー不足で脂肪が分解されているサイン)
- 電解質異常:体のだるさ・しびれ・脈の乱れ
また、尿量の減少・尿の濃縮も重要なサインです。「今日はつわりがひどいだけ」と自己判断せず、以下のような状態が続く場合は速やかに受診してください。
- 何を飲んでもすぐに吐いてしまう
- 1日中吐き気が続き、まったく休めない
- ふらふらして立っていられない
- 尿の回数・量が明らかに減っている
- 短期間で体重が急激に減っている
- 胃酸や胆汁を吐くようになった
これらのサインは「妊娠悪阻の注意サイン」であり、我慢することで症状がより深刻化するリスクがあります。
入院中はどんな治療を受けるのか?
妊娠悪阻の入院治療は、安静・点滴による水分・電解質補給・制吐剤投与が中心です。経口摂取を一時的に中止し、体の回復を最優先に進めます。
点滴・輸液療法
初期治療は点滴治療が基本です。MSDマニュアルによると、乳酸リンゲル液2Lを最低でも3時間以上かけて投与し、尿量100mL/時以上を維持することを目標とします。ナトリウム・カリウムなどの電解質も補充します。ただし2Lの点滴投与を行うのは入院の場合であり、外来で点滴投与を行う場合は0.5L程度となります。
ただし、低ナトリウム血症の急速補正は「浸透圧性脱髄症候群」を引き起こすリスクがあるため、慎重に行われます。
ビタミンB1(チアミン)の投与
妊娠悪阻ではビタミンB1が欠乏しやすく、放置すると「ウェルニッケ脳症」(脳への悪影響)を引き起こす可能性があります。そのため、いきなりブドウ糖投与を行うのではなく、必ずチアミンを静脈内投与を事前にもしくは同時に行います。
制吐剤の投与
輸液後も嘔吐が続く場合は、制吐薬が使用されます。主な薬剤は以下の通りです。
- ビタミンB6(ピリドキシン):10〜25mg、8時間毎または6時間毎
- メトクロプラミド:5〜10mg、静注または経口、6〜8時間毎
- プロメタジン:12.5〜25mg、経口・筋注・直腸内投与、4〜8時間毎
- オンダンセトロン:8mg、経口または筋注、12時間毎(妊娠10週以前は先天異常リスクに注意)
静脈栄養(高カロリー輸液)
長期間まったく食事が摂れない重症例では、点滴で栄養を補給する「完全静脈栄養」が行われることもあります。また、上記治療が無効な場合は、コルチコステロイド(メチルプレドニゾロン)が使用されることがあります(期間形成期は使用不可)。

入院期間はどれくらいかかるのか?
妊娠悪阻の入院期間は症状の重さによって異なり、軽度で3〜5日、中等度〜重度では1〜2週間以上が目安です。
退院の判断基準は以下の4点です。
- 吐き気が落ち着き、水分・食事が摂れるようになった
- 尿中ケトン体が陰性〜軽度になった
- 電解質が正常範囲に戻った
- 体重減少が止まり、増加傾向になった
症状が軽快しても「つわりがゼロになる」わけではありません。退院後も無理をせず、においや刺激など症状を誘発する要因を避けることが大切です。症状が再燃した場合は、通院点滴や再入院が必要になることもあります。
妊娠悪阻が妊娠16〜18週を過ぎても持続するまれなケースでは、肝臓への深刻なダメージ、ウェルニッケ脳症などの報告、また胃の疾患など妊娠悪阻だと思っていた症状が別の疾患から来ている症例も報告されています。
赤ちゃんへの影響はあるのか?
妊娠初期の軽度〜中等度の妊娠悪阻であれば、赤ちゃんへの影響はほとんどありません。胎盤が完成するのは妊娠16週ごろで、それまでは「卵黄嚢」からエネルギーを補給できるためです。
ただし、重症化して初期以降も脱水・電解質異常が続く場合は、以下のリスクが上昇します。
- 胎児発育遅延
- 低出生体重児
- 早産
赤ちゃんへの影響を防ぐためにも、「注意が必要なサイン」を感じたら我慢せず早めに受診することが重要です。
入院費用はいくらかかる?保険や公的制度は使えるのか?
妊娠悪阻と診断されると健康保険が適用され、3割負担での治療が可能です。入院費用の目安は大部屋で1日1〜2万円前後、個室を希望する場合は加えて個室代がかかります。個室代は病院によって異なります。とされています。
健康保険の適用条件
「つわり」は疾病ではないため健康保険は適用されません。しかし、「妊娠悪阻」と診断された場合は疾病扱いとなり健康保険が適用されます。診断の基準は体重5%以上の減少・尿中ケトン体陽性・排尿回数や量の減少などです。
高額療養費制度
入院が長引いて医療費が高額になった場合は、「高額療養費制度」を利用できます。1ヶ月の自己負担額が所得に応じた上限額を超えた分が払い戻される制度です。事前に「限度額適用認定証」を取得しておくと、窓口での支払いを上限額に抑えられます。
傷病手当金
会社員・公務員など健康保険の被保険者が、妊娠悪阻で働けなくなった場合は「傷病手当金」を申請できます。疾患により勤務できない日が連続して4日以上となった場合に申請ができます。ただし申請には療養担当者からの書類記載が必要であり、その期間に必要な治療を受けた場合に限られます。主治医に受診や相談がなく、自己判断で休んでいた場合、事後で書類記載を依頼しても記載できないケースや、妊娠悪阻ではなく軽症のつわりの場合は申請しても給付が下りない場合があります。国民健康保険加入の自営業者は対象外となります。
民間保険の給付金
重症妊娠悪阻による入院は、多くの民間医療保険で入院給付金の支払い対象となります。ただし、保険商品によって保障範囲が異なります。妊娠後に加入した場合、その妊娠・出産は保障対象外となることがほとんどなので、妊娠前の加入が重要です。

状態を確認し、必要な対応をご提案します
体重や尿検査などから脱水の程度を確認します。入院が必要と判断した場合は、提携先をはじめとした医療機関へすみやかにご紹介します。
どのタイミングで受診・相談すればよいのか?
「水分が1日まったく摂れない」「ふらふらして動けない」状態が続いたら、その日のうちに受診してください。自己判断で様子を見ることが、症状の重症化につながります。
以下のいずれかに当てはまる場合は、すぐにかかりつけの産婦人科・婦人科に連絡しましょう。
- 水分を一切受け付けない状態が半日以上続いている
- 尿が出ていない、または極端に少ない
- 立ちくらみ・ふらつきがひどく、日常生活が送れない
- 短期間(1〜2週間)で体重が2〜3kg以上減った
- 胃酸・胆汁を吐くようになった
産婦人科での初診では、尿検査(ケトン体)・血液検査(電解質・腎機能・肝機能)・体重測定・超音波検査(多胎・胞状奇胎の除外)が行われます。通院での点滴治療で改善する場合もありますが、改善が見られない場合は入院が勧められます。
あゆみレディースクリニック高田馬場は高田馬場駅徒歩1分の立地で、WEB予約・LINE予約に対応しています。すべての医師が女性であるため、つわりや妊娠悪阻に関する不安も相談しやすい環境です。症状が気になる場合は、まずは症状や尿回数、摂取できている水分量などをメモして相談してください。点滴治療には時間がかかるため、予約できる時間が限られています。まずは電話で相談してください。
つわりがつらくて受診を迷っている方へ。あゆみレディースクリニック高田馬場は、高田馬場駅から徒歩1分・WEB予約&LINE予約対応で、忙しい妊婦さんでも通いやすい環境を整えています。産婦人科専門医が丁寧に診察し、点滴治療の必要性や使用可能な内服薬を提示します。妊娠悪阻の症状は様々であり、どんなものに嘔気がでるのかは個人差があります。少しでも軽減できる方法を常駐する助産師と相談することも可能ですのでまずはご予約下さい。
ただし、かかりつけの病院・クリニックでの相談が基本となるため、つわり・悪阻症状が出ている場合はまずはかかりつけで相談しましょう。
よくある質問
つわりと妊娠悪阻はどう違うのですか?
つわりは妊娠に伴う生理的変化で健康保険は適用されません。妊娠悪阻は脱水・体重減少・ケトーシスを伴う疾患で、健康保険が適用されます。体重が5%以上減少したり、尿中ケトン体が陽性になると妊娠悪阻と診断されます。
点滴だけで入院しなくても治療できますか?
症状が軽〜中等度であれば、外来(通院)での点滴治療で改善するケースもあります。ただし、通院点滴後も改善が見られない場合や、脱水・電解質異常が重篤な場合は入院が必要です。
妊娠悪阻で入院すると費用はどのくらいかかりますか?
健康保険適用後の自己負担は、大部屋で1日1〜2万円前後、個室の場合は個室代が別途かかります(個室代は病院によって異なります)。高額療養費制度を利用すると、月の自己負担を上限額に抑えられます。
妊娠悪阻は赤ちゃんに影響しますか?
軽度〜中等度であれば赤ちゃんへの影響はほとんどありません。ただし重症化して脱水・電解質異常が続くと、胎児発育遅延・低出生体重児・早産のリスクが上がります。早めの治療が大切です。
仕事を休んだ場合、傷病手当金はもらえますか?
健康保険の被保険者(会社員・公務員など)であれば、妊娠悪阻で働けない期間に傷病手当金を申請できます。事前に主治医と相談して、妊娠悪阻で休職が可能な状態なのか確認しましょう。自己判断で休職し、休職期間に一度も受診もない場合、傷病手当金が下りない可能性もあります。国民健康保険加入の自営業者は対象外です。
妊娠悪阻はいつごろ治まりますか?
多くの場合、妊娠15週ごろに症状が落ち着きます。ただし個人差があり、一部では妊娠後期まで続くケースもあります。症状が長引く場合は医師に相談してください。
民間の医療保険は妊娠悪阻の入院に使えますか?
重症妊娠悪阻による入院は多くの民間医療保険で給付金の対象です。ただし妊娠後に加入した場合は保障対象外となることが多いため、妊娠前の加入が重要です。保険証券で保障内容を確認しましょう。
入院せずに自宅で安静にしていてもいいですか?
水分が少量でも摂れている場合は自宅安静が可能なこともあります。しかし、水分を一切受け付けない・尿が出ない・ふらつきがひどい場合は自宅安静では対応できません。必ず受診して医師の判断を仰いでください。
妊娠悪阻で入院中、上の子の世話はどうすればいいですか?
入院が必要と判断された場合でも、家族のサポートや一時保育・ファミリーサポートなどの地域サービスを活用する方法があります。入院前にかかりつけ医や地域の子育て支援窓口に相談しておくと安心です。
高田馬場近くでつわりや妊娠悪阻を相談できるクリニックはありますか?
あゆみレディースクリニック高田馬場は高田馬場駅徒歩1分で、WEB予約・LINE予約に対応しています。産婦人科専門医が診察し、助産師も常駐しているため、つわりや妊娠悪阻に関する不安も気軽に相談できます。
結論
つわりで点滴・入院が必要になる目安は「体重が妊娠前比5%以上減少」「尿中ケトン体陽性」「水分摂取困難・脱水症状」です。これらのサインが見られたら我慢せず、その日のうちに産婦人科を受診してください。妊娠悪阻と診断されれば健康保険が適用され、高額療養費制度や傷病手当金も活用できます。早期受診・早期治療が赤ちゃんへのリスクを最小限に抑える最善策です。
あゆみレディースクリニック高田馬場
つわりのつらさについてのご相談を承っています。女性医師と助産師が、状態を確認しながら対応を考えます。高田馬場駅すぐ、金曜は20時まで診療しています。
〒169-0075 東京都新宿区高田馬場2-17-6 ゆう文ビル8F/休診日:日曜・祝日/予約制
著者情報

院長 佐藤 歩美
経歴
横浜市立大学医学部 卒業
NTT東日本関東病院 勤務
総合母子保健センター 愛育病院 勤務
ベビースマイルレディースクリニック有明 副院長などを経て 現在に至る
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
日本周産期・新生児医学会 周産期(母体・胎児)専門医
女性医学学会 女性ヘルスケア専門医
日本性感染症学会 認定医
日本抗加齢医学会 認定医
日本医師会 認定産業医




