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ピルを始める前に知っておきたい基礎知識
「ピルって避妊だけのものじゃないの?」と思われている方も多いかもしれません。
実は、ピルには避妊効果だけでなく、生理痛の軽減やPMS(月経前症候群)の改善、子宮内膜症の治療など、女性の生活の質を大きく向上させる効果があります。近年では、生理のつらさを我慢せず、ピルを活用して快適に過ごす選択をする女性が増えています。
しかし、ピルにはメリットだけでなく、副作用や注意すべき点もあります。正しい知識を持って、自分に合った選択をすることが大切です。
この記事では、産婦人科専門医として多くの患者様と向き合ってきた経験をもとに、ピルのメリット・デメリット、そして始める前に知っておきたい注意点を詳しく解説します。
ピルの種類と特徴・・・低用量ピル、ミニピル、中用量ピルの違い
ピルには、含まれるホルモンの種類や量によって、いくつかの種類があります。
低用量ピル(COC)とは
低用量ピルは、エストロゲン(卵胞ホルモン)とプロゲステロン(黄体ホルモン)の両方を含む混合型経口避妊薬(COC)です。エストロゲンが血栓症のリスク上昇に関係しており、リスクを下げる目的に徐々にエストロゲン含有量を減らしたピルが開発されてきた歴史があります。エストロゲンの含有量が1錠あたり0.03mgまたは0.04mgと少量に抑えられているため、「低用量」と呼ばれています。
低用量ピルには、1相性と3相性があります。1相性は全ての錠剤のホルモン量が一定で、3相性は自然なホルモン変化に類似した配合により不正出血が少ないとされています。避妊効果に大きな違いはありません。
主な効果として、**避妊効果**、**生理痛の改善**、**PMSの改善**、**子宮内膜症の治療**などがあります。さらにエストロゲンの含有量を1錠あたりり0.03㎎未満にしたものを「超低用量」とよびます。【月経困難症】の適応で保険で処方するピルの多くは超低用量となります。月経痛の辛い方は保険適応でピルを選択することが可能となります。一度婦人科受診を検討することをお勧めします。
ミニピル(POP)とは
2024年12月に日本で新たに発売開始になったピルであるアリッサ配合錠。アリッサ配合錠は含有するエストロゲンが天然型エストロゲンとされる【エステトロール(E4)】を採用したピルであり、新しいタイプのピルといわれています。エステトロールは血管や肝臓への影響が穏やかであるため、血栓症のリスクを従来よりも抑えることができる、吐き気などの消化器症状も少ないと期待されています。アリッサ配合錠も保険適応薬となりますので、産婦人科クリニックでの相談をお勧めします。ミニピルは、プロゲステロン(黄体ホルモン)のみを含むピルで、エストロゲンを含みません。2025年6月に国内で初めてのミニピルであるスリンダ錠(保険適応外 自費)が発売され、注目を集めています。
エストロゲンが含まれていないため、血栓症のリスクがほぼなく、従来の低用量ピルが服用できなかった方でも使用できる可能性があります。具体的には、35歳以上で1日15本以上喫煙する方、40歳以上の方、肥満の方、高血圧の方、前兆を伴う片頭痛がある方などで低用量ピルの使用が難しかった方でも使用できる可能性があります。使用については産婦人科でよく相談してみてください。
避妊効果は低用量ピルと同等とされていますが、毎日決まった時間に服用する必要があり、服用時間が12時間以上遅れると避妊効果が下がる可能性があります。取り扱っていない産婦人科もあるため、希望される方は確認が必要です。
中用量ピルとは
中用量ピルは、エストロゲンの含有量が1錠あたり50μgのピルです。主に生理を移動したり、不正出血や無月経などの治療に用いられます。緊急避妊を目的として使用されることもありますが、継続的な避妊目的では使用できません。では使用できません。
エストロゲンの含有量が多いため、低用量ピルやミニピルと比べると副作用が出やすいと言われています。
ピルのメリット・・・生活の質を向上させる多彩な効果
ピルには、避妊効果以外にも、女性の生活の質を大きく向上させる様々なメリットがあります。
確実な避妊効果
ピルの最も基本的なメリットは、高い避妊効果です。
正しく服用すれば、避妊効果は99%以上とされており、コンドームよりも確実な避妊方法と言えます。自分の意思で避妊をコントロールできるため、ライフプランを立てやすくなります。
生理痛(月経困難症)の改善
「生理のたびに寝込んでしまう」「鎮痛薬が手放せない」という方にとって、ピルは大きな助けとなります。
ピルは子宮内膜の増殖を抑えるため、生理時の出血量が減り、生理痛が軽減されます。子宮筋腫や子宮内膜症が原因の生理痛にも効果が期待できます。10代から低用量ピルや黄体ホルモン薬を使用することも可能です。
PMS・PMDDの改善
生理前になると、イライラする、気分が落ち込む、体がむくむ、頭痛がするなどの症状に悩まされる方は少なくありません。これらはPMS(月経前症候群)やPMDD(月経前不快気分障害)と呼ばれる状態です。
ピルはホルモンバランスを安定させることで、これらの症状を軽減する効果があります。低用量ピルや漢方薬による薬物療法が有効で、症状によっては抗うつ薬などの併用を行う場合もあります。
子宮内膜症の治療
子宮内膜症は、子宮内膜に類似する組織が子宮内腔以外の部位で発生、発育する病気で、20~30代の女性で発症することが多く、代表的な症状には生理痛や慢性的な骨盤痛、肛門痛などの「痛み」と「不妊」があります。
ピルは子宮内膜の増殖を抑えることで、子宮内膜症の進行を抑制し、痛みを軽減する効果があります。
生理周期のコントロール
旅行や試験、スポーツの大会など、大切なイベントに生理が重ならないようにしたい場合、ピルを使って生理日をずらすことができます。月経移動のためのピルの内服は少なくとも10日以上の内服が必要です。あまり直前での受診では間に合わないこともあります。ずらしたい月経の1か月くらい前までに受診することをお勧めします。
また、定期的にピルを服用することで、生理周期が安定し、予定が立てやすくなります。
その他のメリット
ピルには、ニキビや多毛症の改善、卵巣がんや子宮体がんのリスク低減などの効果も報告されています。
ピルのデメリット・副作用・・・知っておくべきリスク
ピルには多くのメリットがある一方で、副作用やリスクもあります。正しく理解して、自分に合った選択をすることが大切です。
初期の副作用(マイナートラブル)
ピルを飲み始めた最初の1~3ヶ月は、体がホルモンバランスの変化に慣れるまで、以下のような副作用が出ることがあります。
- 吐き気・嘔吐
- 頭痛
- 乳房の張り・痛み
- 不正出血
- むくみ
- 気分の変化(イライラ、抑うつ)
これらの症状は、多くの場合、数ヶ月で自然に軽減していきます。症状が強い場合や長く続く場合は、ピルの種類を変更することで改善することもあります。最近では高校生でピルを飲み始める方も増えてきています。もともと生理痛やPMSが辛かったが、受験を機にピル内服を考え受診される方も多くいらっしゃいます。飲み始めの時期に副作用が出る可能性があるため、受験を考慮してのピル開始の場合、あまり直前での開始ではなく数か月前からの開始をお勧めしています。
血栓症のリスク
低用量ピルや中用量ピルで最も注意すべき副作用は、血栓症です。
血栓症とは、血管に血の塊がつまってしまう状態のことで、生じる場所などによっては命にかかわることもあります。低用量ピルで血栓症のリスクが上がると言っても、それは微々たるもので、ほとんど気にする必要はありませんが、完全にゼロではありません。
血栓を作りやすくする原因となるのは、エストロゲンです。そのため、エストロゲンを含まないミニピルは、血栓症リスクがほぼないとされています。
以下のような方は、血栓症のリスクが高いため、低用量ピルの服用に注意が必要です。
- 35歳以上で1日15本以上喫煙する方
- 肥満の方
- 高血圧の方
- 前兆のある片頭痛がある方
- 血栓症の既往歴がある方
- 長時間安静が必要な手術を控えている方(全身麻酔を使用する手術を控えている方は、手術前後でピルが中止になるため、手術担当医師に確認が必要です。)
これらに該当する方は、ミニピルを検討するか、医師とよく相談する必要があります。
不正出血
ピルを服用していても、生理以外のタイミングで少量の出血(不正出血)が起こることがあります。とくに飲み始め3か月程度、ミニピル、下痢など薬の吸収が落ちるような時は不正出血の頻度が増えます。
多くの場合、服用を続けることで改善していきますが、出血が続く場合は医師に相談してください。
毎日の服用が必要
ピルは毎日決まった時間に服用する必要があります。飲み忘れが心配な方は、スマートフォンのアラーム機能を活用するなど、工夫が必要です。
性感染症は予防できない
ピルは避妊効果はありますが、性感染症(クラミジア、淋菌、梅毒、HIVなど)を予防する効果はありません。
性感染症を予防するためには、コンドームの併用が必要です。
ピルを始める前に知っておきたい注意点
ピルを安全に、効果的に使用するために、始める前に知っておきたい注意点があります。
医師の診察を受ける
ピルは医師の処方が必要な医薬品です。自己判断で服用を始めるのではなく、必ず婦人科を受診し、医師の診察を受けてください。
診察では、問診、血圧測定、必要に応じて血液検査や超音波検査などを行い、ピルが服用できる状態かどうかを確認します。持病や服用中の薬がある場合は、必ず医師に伝えてください。
自分に合ったピルを選ぶ
ピルには様々な種類があり、それぞれ特徴が異なります。年齢、喫煙の有無、持病、ライフスタイル、目的(避妊、生理痛改善、PMS改善など)に合わせて、医師と相談しながら自分に合ったピルを選ぶことが大切です。
血栓症のリスクが気になる方、喫煙している方、40歳以上の方、片頭痛がある方などは、ミニピルを検討するのも良いでしょう。
定期的な検診を受ける
ピルを服用している間は、定期的に婦人科を受診し、副作用のチェックや子宮がん検診などを受けることが大切です。
不正出血が続く、激しい頭痛がする、足の痛みやむくみがあるなど、気になる症状がある場合は、すぐに医師に相談してください。
飲み忘れに注意する
ピルは毎日決まった時間に服用することで、生理痛の緩和や高い避妊効果が得られます。飲み忘れると効果が下がったり、不正出血することがあるため、注意が必要です。
飲み忘れた場合の対処法は、ピルの種類によって異なりますので、事前に医師に確認しておきましょう。
他の薬との相互作用に注意する
ピルは、一部の抗生物質や抗てんかん薬などと相互作用を起こし、効果が弱まることがあります。他の薬を服用する場合は、必ず医師や薬剤師に相談してください。
抜歯などの歯科治療を受ける場合
低用量ピル服用者は、下顎智歯の抜歯後にドライソケット(抜歯窩に血餅が形成されず、強い痛みを伴う状態)が発症しやすいという報告があります。歯科治療を受ける際は、ピルを服用していることを歯科医師に伝えてください。
こんな症状があったら、まずは相談を
「これくらいで受診していいのかな?」と迷っている方も、以下のような症状がひとつでも当てはまる場合は、ぜひ一度ご相談ください。
- 生理痛が毎回つらい
- 生理不順が続いている
- 生理じゃないときに出血がある
- 下腹部がなんとなく重い・痛い
- 生理前になるとイライラ・気分の落ち込みが強い
- 生理の量が多くて、昼間も夜用ナプキンが手放せない
- 避妊についてきちんと相談したい
「様子を見ていたら、いつの間にか我慢するのが当たり前になっていた」という方も少なくありません。我慢せず、早めに相談することで、適切な治療やサポートを受けることができます。
あゆみレディースクリニック高田馬場でのピル相談
あゆみレディースクリニック高田馬場は、高田馬場駅から徒歩1分とアクセスが良く、仕事や学校の帰りにも立ち寄りやすい婦人科クリニックです。
診察する医師はすべて女性で、同じ女性として、月経や更年期、不妊、避妊、性の悩みなど、話しづらいテーマにも真剣に耳を傾けます。「どこまで話していいんだろう…」「こんなこと聞いたら恥ずかしいかな…」そんな不安があっても大丈夫です。症状だけでなく、生活背景・気持ち・これからの予定も含めて相談しながら、一緒に解決策を考えていくスタイルです。
ピルに関しては、低用量ピル、ミニピル、月経移動など、一人ひとりの体質やライフスタイルに合わせた方法を提案しています。「ピルって怖くないの?」「副作用は?」といった不安な点も、メリットとデメリットの両方をきちんと説明しますので、納得して選びやすい環境です。
保険適用の低用量ピルは処方箋をお渡しし、自費の低用量ピルとミニピルは院内処方でお薬をお渡しします。当院はミニピルとしてスリンダとセラゼッタ(輸入薬)の2種類を取り扱っております。
「なんとなく不安」「生理やおりもののいつもと違う」といった”モヤモヤ段階”の相談も歓迎しています。我慢していた不調を、相談していい不調に変えていけるよう、あなたのペースに合わせてサポートします。
まとめ
ピルには、避妊効果だけでなく、生理痛の改善、PMSの軽減、子宮内膜症の治療など、女性の生活の質を大きく向上させる多くのメリットがあります。
一方で、初期の副作用や血栓症のリスク、毎日の服用が必要といったデメリットもあります。
大切なのは、正しい知識を持ち、医師と相談しながら、自分に合ったピルを選ぶことです。年齢、喫煙の有無、持病、ライフスタイル、目的に合わせて、低用量ピル、ミニピル、中用量ピルなど、様々な選択肢があります。
「生理がつらいけど、病院に行くほどかな…」「婦人科ってなんとなく行きづらい」と悩んでいる方も、まずは気軽に相談してみてください。あゆみレディースクリニック高田馬場では、女性医師が、あなたの不安や悩みに寄り添い、一緒に最適な解決策を考えていきます。
高田馬場駅から徒歩1分、女性医師による婦人科専門クリニックで、”我慢する”から”相談する”へ一歩踏み出してみませんか?
著者情報

院長 佐藤 歩美
経歴
横浜市立大学医学部 卒業
NTT東日本関東病院 勤務
総合母子保健センター 愛育病院 勤務
ベビースマイルレディースクリニック有明 副院長などを経て 現在に至る
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
日本周産期・新生児医学会 周産期(母体・胎児)専門医
女性医学学会 女性ヘルスケア専門医
日本性感染症学会 認定医
日本抗加齢医学会 認定医
日本医師会 認定産業医




