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妊娠がわかったとき、多くの方が最初に悩むのが「どこで産むか」という問題です。
出産できる施設には、総合病院、大学病院、産婦人科クリニック、助産院など、さまざまな選択肢があります。それぞれに特徴があり、どこを選ぶかによって、妊娠中の過ごし方や出産の体験が大きく変わってきます。
「設備が整っている方が安心?」「アットホームな雰囲気がいい?」「費用はどれくらい違うの?」・・・初めての出産であれば、なおさら迷いますよね。
この記事では、産婦人科医の視点から、病院・クリニック・助産院それぞれの違いと、後悔しない産院選びのポイントを詳しく解説します。
出産できる施設の種類と特徴

出産できる施設は、大きく分けて「総合病院・大学病院」「産婦人科クリニック(診療所)」「助産院」の3つに分類されます。
それぞれの施設には明確な違いがあり、医療設備やスタッフ体制、提供されるサービスも異なります。
総合病院・大学病院の特徴
総合病院や大学病院は、ベッド数が20床以上の大規模な医療機関です。
産婦人科以外にも小児科や内科など、さまざまな診療科が併設されており、最先端の医療機器を備えているところが多いのが特徴です。
メリット
- 充実した医療設備と診療科の連携により、母児の急変にも迅速に対応できる
- 合併症がある場合でも、他科と連携して専門的な医療が受けられる
- 周産期母子医療センターが併設されている場合、NICU(新生児集中治療室)やMFICU(母体胎児集中治療室)があり、緊急時に高度な医療を受けられる
- 医師数が多く、チーム医療体制が整っている
デメリット
- 外来と病棟でスタッフが分かれていることが多く、初めて会うスタッフの中で分娩することもある
- 入院食は他科と同じ扱いのため、味気なく感じることがある
- 「病院っぽさ」が強く、アットホームな雰囲気は期待しにくい
- 400床以上の病院では、紹介状がない場合に「初診時選定療養費」がかかることがある
- 患者数が多いため、待ち時間が長く、診察時間は短めになることがある
産婦人科クリニック(診療所)の特徴
クリニックは、ベッド数が19床以下の医療機関です。
主にリスクの少ない妊娠・出産を対象としており、地域に密着した施設が多いのが特徴です。
メリット
- マタニティヨガや産後クラスなど、楽しみながらヘルスケアできるプログラムが充実している
- お祝い膳やエステなど、入院中でもリラックスして楽しめる工夫がある
- スタッフの配置が外来と病棟で分かれていないことが多く、慣れ親しんだスタッフに診てもらえる
- 受け入れられるバースプランの幅が比較的広い
- 初診から産後まで同じ担当医に診てもらえるケースがある(分娩時はタイミングによります)
- 個室が多く、プライバシーが守られやすい
デメリット
- 高度医療には対応していないため、必要に応じて設備の充実した病院へ紹介される
- 緊急時には救急車で大きな病院へ搬送されることがある
- 出生後、赤ちゃんがNICUでの管理が必要となった場合は、母子が別々の病院に入院となることがある
- 分娩中に突然初めての病院に搬送された場合、初対面の医療スタッフに囲まれての出産となる
助産院の特徴
助産院は、助産師が正常な妊娠・出産のみを扱う、医師のいない施設です。
医療行為を行えないため、必要であれば連携する病院へ転院や搬送することもあります。
メリット
- 妊娠初期からマンツーマンで担当した信頼関係のある助産師が、分娩も担当する
- 分娩台を使わない自由度の高いお産ができる
- 家庭的な雰囲気の中で、精神的なアドバイスやフォローを受けられる
- 陣痛から出産までずっと付き添ってもらえる
- 自宅出産や家族全員の立ち会いなど、自分に合った出産環境を選択しやすい
デメリット
- 医師がいないため、一切の医療行為ができない
- リスクのない正常妊娠経過であることが利用条件となる
- 合併症のある方や多胎妊娠の方は利用できない
- 分娩時に医療行為が必要な経過になったときは、提携する医療施設へ転院する必要がある
後悔しない産院選びの5つのポイント
産院選びで重要なのは、「自分が何を優先したいか」を明確にすることです。
ここでは、産院を選ぶ際にチェックすべき5つのポイントを解説します。

1. 通いやすさ(アクセス)
妊婦健診は出産までに約14回、場合によってはそれ以上あります。
お腹が大きくなってからの通院や、陣痛が来たときの移動手段を考えると、「自宅からの近さ・通いやすさ」は非常に重要です。
働いている方は、職場からの距離も考慮する必要があります。ただし、産休に入ってからの通いやすさや、出産時に入院することを考えると、自宅からあまり遠くないことも大切です。
里帰り出産の場合は、実家近くの医療機関で分娩、それまでは自宅近くの産婦人科クリニックで妊婦健診を行う形となります。里帰りまでの間、妊婦健診を行うクリニックは必ずしも分娩を行っていなくても問題ありません。当院のように里帰り分娩の方の妊婦健診を行っているクリニックを探してみてください。
2. 妊娠・出産のリスク
妊娠・出産にリスクがある場合は、高度医療が可能な施設を選ぶ必要があります。
赤ちゃんや妊婦さんの状態に注意が必要な場合や多胎妊娠など、ハイリスクな妊娠・出産であるときは、周産期母子医療センターや総合病院・大学病院が選択肢となります。
もともと持病がある方や早産リスクの高い方など、医師の判断で総合病院での出産となることもあります。
3. お産の方法と希望
「自然分娩で産みたい」「無痛分娩を考えている」「立ち会い出産をしたい」など、ご自身の希望に対応しているか確認しましょう。
特に無痛分娩は、取り扱っていない施設や、平日や日中しか対応していない施設、24時間対応している施設、計画無痛分娩のみの施設、自然陣痛がきてからでも無痛対応が可能な施設などもあるため、事前の確認が必須です。
また、バースプランをどの程度受け入れてもらえるかも、施設によって大きく異なります。
4. 費用とサービス
妊娠・出産にかかる費用は、施設によってさまざまです。
一般的に、私立の医療機関よりも公立の方が安いとされていますが、個室を利用するか、無痛分娩をするかなどでも費用は変わってきます。
出産育児一時金でまかなえる範囲なのか、プラスでいくらかかるのかを確認しましょう。厚生労働省が【出産なび】という、全国の産院の出産費用とサービスがみえるサイトを運営しております。そちらも非常に参考になるかと思います。
https://birth-navi.mhlw.go.jp/
また、産後は身体の回復が重要なため、「個室で周りを気にせず休めるか」「美味しい食事(お祝い膳)が出るか」といった快適さの追求は決して贅沢ではなくママの心身の健康を整えるための重要なポイントとなる方もいるかと思います。ご自身にとっての優先順位で判断しましょう。
5. 産後ケアと退院後のサポート
出産はゴールではありません。退院してからが育児の本番です。
「退院後も母乳外来で相談できるか」「産後ケア(デイケアや宿泊など)を行っているか」など、産んだ後も頼れる場所かどうかは、長く付き合っていく上で重要なポイントです。
特に、出産した施設でそのまま産後ケアを利用できることは大きなメリットです。妊娠中の経過や、お産のときの様子、入院中の赤ちゃんの様子などをスタッフがすでに把握しているため、「一から説明しなくても分かってくれる」という安心感があります。
施設によっては、カウンセリングやマタニティクラスなど、妊娠中のサポート体制だけでなく、産後に赤ちゃんと一緒に受けるヨガクラスやベビーマッサージクラスなど産後のサポート体制も充実しているところがあります。
母乳育児への方針も確認しておきたいポイント

意外と見落としがちですが、入院中の疲労度やメンタルに直結する重要なポイントがあります。
それは、施設の「母乳育児への方針」です。
産院によって方針がかなり変わります。母乳を強く推奨しているのか、ママの希望優先でサポートをしてもらえるのか。
最近はめっきり減りましたが、入院中は新生児室で24時間赤ちゃんを預かる施設もあります。ママが入院中に休めるというメリットの反面、退院後に突然始まる24時間赤ちゃんとの生活はギャップも大きくなりがちで、初産婦さんは退院後に苦戦するケースもあります。最近では母児同室を基本としている施設が増えています。入院中から育児や赤ちゃんとの生活に少しずつ慣れていけるのは非常にメリットです。必要時は新生児を預けられるのか確認しておくと安心です。
ご自身がどちらのサポートを望むか、ホームページや施設見学などで雰囲気を確認しておくと安心です。
実際に足を運んで確認することの大切さ
産院選びに「絶対の正解」はありません。
「安全性を最優先したい」のか、「美味しいご飯と個室でリラックスしたい」のか、「無痛分娩ができること」なのか。
「自分がどんなお産をして、育児のスタートをどのように始めたいか」をイメージすることが大切です。
とはいえ、まだ経験したことのない未来を具体的にイメージするのは、なかなか難しいことだと思います。
だからこそ、可能ならば実際に足を運んでみることも病院選びの参考になります。一部の施設では院内ツアーなどを行っています。実際に見学に行けなくても、ホームページ上に施設内を見て回っているような動画を掲載している施設もあります。
病院見学に行ったり、気になることを問い合わせてみたりして、その場の空気感を肌で感じてみてください。
スタッフの対応や施設の雰囲気は、実際に訪れてみないとわからないものです。
セミオープンシステムという選択肢
「総合病院の安心感も欲しいけど、クリニックのアットホームな雰囲気も捨てがたい」「総合病院で分娩したいが、仕事や家庭の事情で総合病院の産科外来と予定が合わない」・・・そんな方には、セミオープンシステムという選択肢もあります。
セミオープンシステムとは、妊婦健診は通いやすいクリニックで受け、出産は設備の整った総合病院で行うという方法です。
クリニックと病院が連携しているため、妊娠中の経過をしっかり把握した上で、安全な環境で出産できるというメリットがあります。
ただし、すべての施設で実施しているわけではないため、希望する場合は事前に確認が必要です。里帰り分娩希望の方の妊婦健診もセミオープンシステムを行っている産婦人科クリニックで対応していることが多いです。

まとめ:あなたに合った産院で、納得のいく出産を
出産できる施設には、病院、クリニック、助産院があり、それぞれに特徴があります。
総合病院は医療設備が充実しており、緊急時の対応力が高い一方で、待ち時間が長くなりがちです。クリニックはアットホームな雰囲気でサービスが充実していますが、高度医療には対応できない可能性があります。助産院は自由度の高いお産ができますが、医療行為はできません。
産院選びで重要なのは、通いやすさ、妊娠・出産のリスク、お産の方法と希望、費用とサービス、産後ケアと退院後のサポートの5つのポイントです。
また、母乳育児への方針や、実際に足を運んで確認することも大切です。
セミオープンシステムという選択肢もあるため、ご自身の状況に合わせて検討してみてください。
「自分がどんなお産をして、育児のスタートをどのように始めたいか」をイメージし、納得のいく産院を選びましょう。
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高田馬場駅から徒歩1分の便利な立地で、予約制によるWEB予約やLINE予約に対応しており、忙しい中でも通いやすい環境を提供しています。全ての医師が産婦人科専門医で、女性医師が常駐しているので、患者さんはより相談しやすいと感じるでしょう。
生理痛(月経困難症)は、「生理は痛いもの」と耐えてしまう人が多いですが、症状に合わせて鎮痛薬、低用量ピル、黄体ホルモン薬、漢方など、いくつかの選択肢から無理のない方法を一緒に考えていく流れなので、「毎月寝込むのが当たり前」を変えるきっかけになります。
また、必要があれば適切な医療機関への紹介も行っており、まずは症状をメモして相談することを推奨しています。
女性の健康に関するお悩みは、一人で抱え込まず、まずはご相談ください。
著者情報

院長 佐藤 歩美
経歴
横浜市立大学医学部 卒業
NTT東日本関東病院 勤務
総合母子保健センター 愛育病院 勤務
ベビースマイルレディースクリニック有明 副院長などを経て 現在に至る
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
日本周産期・新生児医学会 周産期(母体・胎児)専門医
女性医学学会 女性ヘルスケア専門医
日本性感染症学会 認定医
日本抗加齢医学会 認定医
日本医師会 認定産業医




