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「くしゃみをしたら、また漏れちゃった…」
出産後、こんな経験をしたことはありませんか?産後の尿漏れは、多くのママが経験する悩みです。でも、誰にも相談できずに一人で抱え込んでいる方も少なくありません。
実は、出産経験者の約84%が産後に尿漏れを経験しているというデータがあります。これは決して珍しいことではなく、多くの女性が同じ悩みを抱えているのです。
この記事では、産後の尿漏れがなぜ続くのか、その原因を詳しく解説します。さらに、自宅でできる骨盤底筋のセルフチェック方法や、婦人科を受診すべきタイミングについてもご紹介。意外と知られていない事実とともに、効果的な対策法をお伝えしていきます。
産後の尿漏れはなぜ起こる?知っておきたい3つの原因
産後の尿漏れには、明確な理由があります。
妊娠中、赤ちゃんを支えるために子宮はどんどん大きくなります。その重みで膀胱が常に圧迫され、骨盤底筋という筋肉群に大きな負担がかかり続けるのです。出産時には、赤ちゃんが産道を通る際に骨盤底筋が大きく引き伸ばされ、筋肉や靭帯にダメージを受けてしまいます。
特に3500g以上の大きな赤ちゃんを出産した方や、分娩時間が長かった方は、骨盤底筋へのダメージが大きくなる傾向があります。
妊娠中から始まる骨盤底筋への負担
妊娠前から運動習慣がない方は、骨盤底筋の筋力が弱いことが多く、妊娠後の尿漏れ予備軍になりやすいと言われています。大きくなった子宮で膀胱を常に上から押さえつけている状態が続くため、妊娠中から尿漏れを経験する方も少なくありません。
さらに、産道を広くして出産に備えるために、リラキシンというホルモンが妊娠中に分泌されます。このホルモンは関節や靭帯を緩める作用があり、尿道を閉めるための骨盤底筋も緩んでしまうのです。
出産時のダメージと産後の回復期
出産を通じて、骨盤底筋自体が傷つき、十分に尿道を閉めることができなくなります。産後3ヶ月まではリラキシンの分泌が続くため、骨盤底筋が緩んだ状態が継続します。
産後3〜5日間に尿漏れを経験した方は約31%。そのうちの約45%は産後3ヵ月においても尿漏れを感じていたという調査結果があります。産後から3日くらいの時期に、トイレまで我慢が全くできない、もしくは全く尿意を感じることができずに尿漏れを経験する方もいます。
骨盤底筋の役割と重要性
骨盤底筋は、骨盤の底をハンモックのように支えている筋肉群です。膀胱や子宮、直腸といったお腹の臓器を下から支える大切な役割を担っています。この筋肉は尿道や膣、肛門を囲むように配置されていて、排尿や排便のコントロールにも深く関わっているのです。
普段は意識することが少ない筋肉ですが、くしゃみをした時や重いものを持つ時に無意識に力が入り、臓器が下がらないように守ってくれています。骨盤底筋が正常に機能していれば、お腹に圧力がかかっても臓器をしっかりと支えることができます。
あなたの骨盤底筋は大丈夫?今すぐできるセルフチェック
「私の骨盤底筋、ゆるんでる?」
そんな不安を感じている方へ、自宅で簡単にできるセルフチェック方法をご紹介します。
基本的なセルフチェック項目
以下の項目に当てはまるものがあるか、確認してみましょう。
- 妊娠中や出産後に尿漏れを経験したことがある
- お風呂上がりに膣から水がジャーッと漏れ出す
- 最近お尻が大きくなり垂れてきた、下腹が出てきた
- 座っているときにひざを閉じにくく、ひざが開いてしまう
- 咳やくしゃみをしたとき、笑ったときなどに尿が”ちょこっとモレ”をすることがある
- 走ったりジャンプをしたときに尿が漏れる
- 重いものを持ち上げたときに尿が漏れる
- トイレでふき終わったあとに、尿がちょろっと漏れてしまう
これらの項目に一つでも当てはまる方は、骨盤底筋がゆるんでいる可能性があります。
尿漏れのタイプを知ろう
尿漏れには、いくつかのタイプがあります。自分がどのタイプに当てはまるか確認してみましょう。
腹圧性尿失禁:お腹に力がかかると起こる尿漏れです。くしゃみ、咳、ジャンプなどで少量漏れるのが特徴。尿漏れ全体の約63%を占め、女性の4割、2000万人以上の人が悩んでいると言われています。
切迫性尿失禁:急にトイレに行きたくなり、我慢できずに漏れてしまうタイプ。トイレに行く途中で間に合わなかったり、以前よりトイレの回数が増えてきたと感じる方はこのタイプかもしれません。
混合型尿失禁:腹圧性と切迫性の両方の症状が現れるタイプです。
骨盤底筋の動きを確認する方法
骨盤底筋が正しく動いているか、尾骨の動きで確認することができます。横になり、尾骨の先端を指先で触っておきます。骨盤底筋を収縮させて、尾骨が指先から離れていく感覚があればOKです。
トイレでの排尿時に途中で尿を止めるようにしてみて、途中で止められるようなら骨盤底筋が働いている証拠です。ただし、この方法を頻繁に行うと膀胱に負担がかかるため、確認程度にとどめましょう。
放置は危険!尿漏れが引き起こす意外なリスク
「そのうち治るかな…」
そう思って放置していませんか?実は、産後の尿漏れを放置すると、思わぬリスクが潜んでいます。
尿漏れは不快なだけでなく、二次的な抑うつ状態の原因となり、ママの身体にも心にも悪影響を与えることが最新の研究で報告されています。米国テキサス州の産婦人科医らが、産後の女性419名を分娩後から12カ月間追跡して調査したところ、腹圧性尿失禁は出産から12カ月時点での「抑うつスコア」が高いことに関連していることが判明しました。
メンタルヘルスへの影響
尿失禁がひどいと、恥ずかしさや孤立感を感じやすくなり、社会的なつながりから離れる傾向があります。外出中、トイレの場所ばかり気になって落ち着かない、夜にトイレで起きて眠りが浅いといった状態が続くと、精神的にも苦しむようになることは容易に想像できます。
尿漏れによって自信を失ったり、日常生活に支障が出たりすると、自分らしく暮らすことができなくなってしまいます。
将来的な健康リスク
骨盤底筋の機能低下を放置すると、尿漏れだけでなく、子宮や腟、膀胱、直腸などが下がってきて外に出てくることがあります。それぞれ「子宮脱」「膣脱」「膀胱瘤」「直腸瘤」などといい、総称して「骨盤臓器脱」と呼ばれます。
膣に丸いものが触れる感じがある、何かものが降りてきている気がする、夕方になると膣に何かものが挟まったように感じるといった症状がある場合は、骨盤臓器脱の可能性があります。症状にもよりますが、治療は手術が必要な場合もあるため、ひどくなる前に受診することが大切です。
日常生活への影響
尿漏れがあると、運動や性生活への抵抗感にもつながりやすくなります。「子育てで体力を使うのに、運動ができない」「パートナーとの関係にも影響が出てきた」という声も聞かれます。
トイレの悩みや姿勢の崩れなど、日常生活にじわじわと影響が出てくるケースもあるのです。
自宅でできる!効果的な骨盤底筋トレーニング
骨盤底筋トレーニングは、産後の尿漏れ予防と改善に非常に効果的です。
骨盤底筋を正しく鍛えることで、弱くなった筋肉の機能を回復させ、臓器を支える力を取り戻すことができます。特に産後3ヶ月から6ヶ月の時期は骨盤底筋の回復に最適な時期で、この時期にしっかりとトレーニングを行うことで、将来的な尿漏れのリスクを大幅に減らすことができます。
トレーニングを始める前の注意点
産後すぐは会陰切開の傷が治っていなかったり、悪露が続いていたりするため、無理に体操を始めると回復を遅らせてしまう可能性があります。一般的には産後6週間の産褥期が終わり、1ヶ月検診で医師の許可が出てから始めるのが安全です。
痛みが強い場合や出血が続いている場合は、必ず医師に相談してから始めるようにしてください。
基本的な骨盤底筋トレーニングの方法
骨盤底筋トレーニングで最も大切なのは、正しく骨盤底筋を動かせているかどうかという点です。大切なのは骨盤底筋だけを意識的に動かすことで、お尻やお腹の筋肉に力を入れてしまうと効果が半減してしまいます。
基本の動き:膣を締める意識でゆっくり5秒キープ×10回。椅子に座って背筋を伸ばしながら行うと効果的です。入浴中のリラックスタイムを活用するのもおすすめです。
椅子に座って行うトレーニング:膝の間にクッションや丸めたタオルを軽く挟み、足は膝より広く開きます。息を吐きながら骨盤底筋を収縮させましょう。
寝ながら行うトレーニング:あおむけに寝て、足を肩幅に開いて膝を立てます。全身の力を抜いて肛門と膣だけを締め、息を止めずに骨盤底筋を収縮させましょう。
継続のコツと効果が出るまでの期間
骨盤底筋トレーニングの効果を実感できるまでには、一般的に3ヶ月から6ヶ月程度の継続が必要です。最初の1ヶ月は正しい動かし方を習得する期間と考え、焦らずに取り組むことが大切です。
毎日コツコツと続けることで、2ヶ月目頃から尿漏れの回数が減ってきたり、下腹部の重い感じが軽減してきたりと、少しずつ変化を感じられるようになってきます。3ヶ月を過ぎる頃には骨盤底筋の筋力がしっかりと回復し、日常生活での不安が大きく減ってくることが期待できます。
呼吸は止めないようにし、骨盤底筋に意識を集中しましょう。まずはすきま時間に5~6回ずつ、毎日数セットからスタート。慣れてきたら、朝晩各10~20回、まずは2週間続けてみましょう。
婦人科を受診すべきタイミングと治療の選択肢
「いつ病院に行けばいいの?」
そんな疑問を持つ方も多いでしょう。産後の尿漏れは多くの場合、時間とともに自然に改善していきますが、適切なタイミングで医療機関を受診することで、より早く快適な生活を取り戻すことができます。
受診を検討すべきサイン
以下のような症状がある場合は、婦人科や泌尿器科、ウロギネ外来(泌尿器科と婦人科の境界領域を診る科)の受診をおすすめします。
- 産後3ヶ月を過ぎても尿漏れが改善しない
- 骨盤底筋トレーニングを2〜3ヶ月続けても変化がない
- 日常生活に支障が出ている(外出が不安、運動ができないなど)
- 尿漏れの量が多く、パッドが手放せない
- 膣に何か触れる感じがある、ものが降りてきている気がする
- 頻尿や急な尿意が続いている
違和感が長期間続く場合や、日常生活に支障が出る場合は、一度相談することで安心できます。
医療機関で受けられる治療
骨盤底筋トレーニングは基本的な治療法ですが、それだけでは改善しない場合、医療機関では様々な治療オプションがあります。
保険診療での治療:骨盤底筋リハビリテーション、薬物療法(切迫性尿失禁の場合)、生活指導などが受けられます。
最新の治療機器:エムセラ(EMSELLA)などの治療機器を用いた治療も選択肢の一つです。服を着たまま椅子に座って骨盤底筋をしっかり動かす治療で、1回約30分(座っているだけ)、メスなし・注射なしの非侵襲的アプローチが特徴です。終わったらそのまま帰れるため、ダウンタイムがほぼありません。
治療の目安は、週1〜2回のペースで計6回(1クール)が推奨されています。まずは「自分に合うか不安」という方に向けて、5分の無料体験や15分トライアルが用意されている施設もあります。
治療を始める前に確認すべきこと
初診で医師に相談する際は、以下のような質問をすると安心です。
- 私の尿漏れは「腹圧性・切迫性・混合」のどれに近いですか?
- エムセラ以外の選択肢(薬、生活指導、腟内施術など)はありますか?
- 何回くらいで変化を判断しますか?やめどきは?
- 私の生活(仕事・育児)だと、通院ペースはどう組むのが現実的ですか?
なお、エムセラなどの治療機器は未承認機器で保険適用外(自由診療)です。ペースメーカー等の体内機器がある方、妊娠中・産後間もない方など受けられない条件もあるため、事前に医師へご相談ください。
まとめ:一人で悩まず、適切なケアで快適な毎日を
産後の尿漏れは、決して珍しいことではありません。出産経験者の約84%が経験しているという事実が示すように、多くのママが同じ悩みを抱えています。
原因は、妊娠・出産による骨盤底筋のダメージです。この筋肉は骨盤の底をハンモックのように支え、膀胱や子宮などの臓器を下から支える大切な役割を担っています。妊娠中の負担と出産時のダメージにより、骨盤底筋が弱ってしまうことで尿漏れが起こるのです。
自宅でできるセルフチェックで、自分の骨盤底筋の状態を確認してみましょう。くしゃみや咳で尿が漏れる、お風呂上がりに膣から水が漏れるといった症状があれば、骨盤底筋がゆるんでいる可能性があります。
放置すると、メンタルヘルスへの影響や将来的な骨盤臓器脱のリスクがあります。でも、適切なケアをすることで改善できる可能性は十分にあります。
骨盤底筋トレーニングは、産後の尿漏れ改善に非常に効果的です。産後1ヶ月検診で医師の許可が出てから始め、毎日コツコツと継続することが大切。3ヶ月から6ヶ月程度で効果を実感できることが期待できます。
トレーニングを続けても改善しない場合や、日常生活に支障が出ている場合は、婦人科や泌尿器科、ウロギネ外来を受診しましょう。保険診療での治療から、最新の治療機器を使った選択肢まで、様々な治療法があります。
あゆみレディースクリニック高田馬場では、高田馬場駅から徒歩1分というアクセスの良さと、医師全員が女性であるという安心感の中で、デリケートな尿漏れの相談ができます。エムセラ(EMSELLA)という治療機器を用いた非侵襲的な治療も提供しており、服を着たまま約30分の施術で、日常生活に支障をきたさない点が特徴です。
まずは無料体験や有料トライアルで、自分に合った治療法を見つけることから始めてみませんか?一人で悩まず、適切なケアで快適な毎日を取り戻しましょう。
著者情報

院長 佐藤 歩美
経歴
横浜市立大学医学部 卒業
NTT東日本関東病院 勤務
総合母子保健センター 愛育病院 勤務
ベビースマイルレディースクリニック有明 副院長などを経て 現在に至る
資格・所属学会
日本産科婦人科学会 産婦人科専門医
日本周産期・新生児医学会 周産期(母体・胎児)専門医
女性医学学会 女性ヘルスケア専門医
日本性感染症学会 認定医
日本抗加齢医学会 認定医
日本医師会 認定産業医




